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大きな器 [心の内側]

彼は大きな器を持っていた
たくさんのものを詰め込むことができるであろう大きな器だった

しかし、その器はからっぽだった
その器を満たすはずのものを示したラベルがいくつか貼られているだけだった

彼は器の中を決して窺おうとしなかった
彼は器の中にはラベルどおりのものが納まり、器を満たしているものと信じて疑わなかった

ある時、彼は器に新たなラベルをひとつ貼り付けてふと思った
「この新しいラベルの示すものはたいそう大きなものになるはずだ。いくらこの器が大きいとはいえ、そろそろ中のものが溢れ出してしまうのではなかろうか。」
彼は器の中に納まっているはずのもののことを思い描いた
器を満たしているものの中には実はさほど大切でないものや、もうすでに価値が薄れているものがあるはずだ
ならば、それらのものを器から除いてしまえば、新たなものを納めることができるはずだ、と

彼は意を決し、初めて器の中を覗き込んだ
彼の目の前には、ただからっぽの空間が広がっていた

彼の表情が固まった
しかし、それはほんの一瞬だった

彼の口から言葉が漏れた
「なんだ心配することはなかったのだな。これならばまだまだいくらでも入るではないか。」




はたして、彼は幸福であった


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